日本最大のパーム油燃焼発電所建設計画が中止

日本最大のパーム油燃焼発電所建設計画が中止

パーム油は私たちが日常消費するインスタント食品やマーガリンなどの植物油脂としてや、洗剤・石鹸・化粧品などの日用品に使われていますが、生産時における熱帯林破壊に伴う生物多様性の損失、地球温暖化への影響、地域住民や労働者への人権侵害などを引き起こしています。

発電では、莫大な量のパーム油を使用することとなり、さらなる農地拡大による熱帯林破壊や人権侵害への影響が懸念されます。

また、日本では、実際に発電が行われている場所で悪臭・騒音などの健康被害が起こっていて、地域の方々が安心して暮らせない状況が続いています。

プレスリリース
2020年7月1日

日本最大のパーム油燃焼発電所建設計画が中止

環境グループ、政府に対しFITによる再生可能エネルギー促進政策の改革
HISに対しパーム油発電建設計画を中止するよう要請

 

国内外の環境NGOのグループは、本日、舞鶴市にパーム油を燃料とする発電所を建設するために設立された会社、「舞鶴グリーンイニシアティブス合同会社」の解散にあたり、歓迎の意を表明する。物議を醸しているこの66メガワットの大規模バイオマス発電所に対しては、地元住民が、日本や国際的な環境団体の支援も得て、9カ月にわたり反対運動を続けてきた。

「ウータン・森と生活を考える会」の石崎雄一郎氏は「これは熱帯林と舞鶴市民にとって大きな勝利でです。旅行会社エイチ・アイ・エスが宮城県で、京都府で三恵エナジーがパーム油発電所を進めていますが、両社に対して事業への関与をやめ、日本政府に対しては、気候変動を悪化させるバイオマス発電への補助金を通じた支援をやめるよう求めます」と話す。

舞鶴パーム油発電所はパーム油を燃料としていることが問題視された。日本は主としてインドネシアおよびマレーシアで生産されたパーム油を輸入している。絶滅危惧種オランウータンの生息環境も含む原生の熱帯林が失われつつあり、過去20年間にインドネシアとマレーシアの350万ヘクタールの熱帯雨林がパーム油生産のためのアブラヤシ農園に転換された。日本は年間約75万トンのパーム油を輸入しており、主に食品や製品に使用されている。もし舞鶴パーム油発電所が建設されれば、年間12万トンのパーム油を燃焼することになり、パーム油生産による環境影響はさらに大きくなる。

11,000人の反対署名など住民からの圧力を受けた事業の投資会社であるカナダ・トロントのAMPエナジーは、2020年4月にプロジェクトから撤退した。4月22日のアースデーに送られた書簡の中で同社代表取締役のポール・エゼキエル氏は「今後、当社及び当社グループはパーム油を燃料とする発電事業の検討は行いません」と述べた。この中で、エゼキエル会長は「地元住民の強い反対」を含むプロジェクトの困難さを引き合いに出した。

AMPは脱退したが、工場の建設・運営を担う予定の日立造船が新しい投資会社を探すかどうか不明であった。しかし、2020年6月23日の定時株主総会で、舞鶴市民グループの森本隆氏が、日立造船の白木敏之常務取締役に同工場の建設計画について質問したところ白木氏は、「今後、パーム油への投資が行われる見込みがないため日立造船はこのプロジェクトから撤退する」と回答。6月26日には舞鶴市長が同発電所建設の中止を表明した。

「数年間にわたるであろうと思われたこの発電所との戦いのために、私たちは総力を結集しました。たった9カ月で事業中止に追い込めたことは驚きです。地元の草の根活動と経験豊富なNGOからのアドバイスを組み合わせることで勝利を収めることができたと思います。世界はさまざまな問題を抱えていますが、他の地域の人々も社会を良い方向に変えることができると思います」と「舞鶴西地区の環境を考える会」の森本隆氏は述べた。

長期的なトレンド
日本では、政府によるインセンティブが発電用のパーム油の使用を促進している。2012年には、固定価格買取制度(FIT)により、再生可能エネルギーの発電電力を電力会社に固定価格で買い取ることを保証する制度が開始された。それ以降、FITによるバイオマス発電に対する買取価格(主に木質ペレット、パーム核殻(PKS)、パーム油)は、24円/KWhと世界で最も高かった。

バイオマス発電のためにパーム油を燃やせば燃やすほど、世界のパーム油需要は増える。2018年3月時点で、日本のFITで承認されたパーム油発電所プロジェクトの総容量は1700 MWであり、もしすべてが建設されるとすれば、毎年340万トンのパーム油が燃やされることになる。これは、現在の日本のパーム油輸入量のほぼ5倍である。この需要の急増は、環境に大きな影響を与える恐れがある。

日本の環境NGOは、宮城県角田市に建設中である、舞鶴発電所に次ぐ規模のパーム油発電所とたたかっている。これまでに20万人の反対署名を集めた。この発電所は、日本の大手旅行会社H.I.S.の子会社であるH.I.S. SUPER電力によって建設されている。

「H.I.S.は旅行会社として、従来からボルネオなどでエコツアーを行い、大自然の魅力を体験しようと宣伝してきました。電気を作るために大規模に森林を破壊するパーム油を燃やすビジネスになぜ乗り出すのか、どうやって顧客に説明するのでしょう。私たちは、H.I.S.に対し、日立造船の先例に倣い、パーム油発電所への関与を放棄するよう求めています」と、FoE Japan、満田夏花氏は言う。

環境を破壊するバイオマス発電への補助が、気候変動を悪化させる
残念なことに、日本政府のバイオマス発電促進政策は、森林破壊や著しい温室効果ガス排出につながる燃料源を避けるためのセーフガードを設けていない。経済産業省が2019年に行った分析によると、パーム油の栽培、加工、輸送を含むライフサイクルを通しての排出量は天然ガスと同程度である。しかし、熱帯林が伐採されると、排出量は5倍になる。泥炭地が開発されると排出量は139倍にもなる。

パーム油の燃焼に加えて、日本のバイオマス政策は、森林の伐採や木材の燃焼も促進している。伐採後の森林の成長と炭素の再吸収は遅いため、気候変動に対する取り組みを妨げる。日本で燃やされる木材のほとんどは、ベトナムや北米から輸入される。

舞鶴パーム油発電所に国際的批判が集まる
日本のバイオマス発電所の急増に環境グループが警戒感を示す中、舞鶴パームオイル発電所は、国際的な注目を集めた。国内外の44の金融機関にあてた共同書簡では、8カ国25団体がこのプロジェクトおよびパーム油発電に反対した。

「気候変動を止めるための時間はあと数年ほどしか残されていない中、間違った気候変動対策に時間を浪費することはできません」と、マイティー・アースのシニア・キャンペーン・ディレクター、デボラ・ラピダス氏は言う。「パーム油を燃やすと、炭素を吸収するために必要な森林の破壊が加速します。木質バイオマスを燃やすと、何年分もの炭素の蓄えが、文字どおり煙になってしまいます。舞鶴のパーム油発電所を停止することは、バイオマスの誤った約束を終わらせるための重要なステップであり、真に再生可能な電力のソリューションに焦点を当てるのに役立つでしょう。」

FITの改革が急務
2020年4月、経済産業省は、環境団体の働きかけ応じて、固定価格買取(FIT)制度のもとで、新規に導入されるバイオマス燃料については温室効果ガスの評価を求めることとした。パーム油、木質ペレット、PKS(パーム核殻)などの従来から認められてきた燃料についても、温室効果ガスの排出を厳しく制限するよう求められる。

「日本の再生可能エネルギー促進政策を通じて、気候変動を悪化させる燃料に補助金を出すべきではありません」と、地球・人間環境フォーラムの飯沼佐代子氏は言う。「温室効果ガスの排出量が高いパーム油は固定価格買取制度から除外されるべきであり、経済産業省は木質バイオマスについても厳しい排出枠を採用する必要があります。」

連絡先: 
ウータン・森と生活を考える会 石崎雄一郎
contact-hutan@hutangroup.org

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