パーム油発電反対アクション

パーム油発電(森林破壊バイオマス発電)反対アクション

気候変動対策の切り札として、再生可能エネルギーが注目されています。日本政府も固定価格買取制度(FIT制度)でそれを後押ししています。しかし、FIT制度に認定されている輸入バイオマス発電の中には、熱帯林を破壊して莫大な温室効果ガスを排出する原因となる「パーム油発電」や北米の生態系豊かな森林を破壊する「森林破壊バイオマス発電」が含まれているのです。ウータン・森と生活を考える会では、海外の森林破壊、国内外での人権侵害につながるパーム油発電並びに森林破壊バイオマス発電、輸入バイオマス発電の反対アクションを行なっておます。 

署名&シェアのお願い

私たちの電気代が、熱帯林破壊・生物多様性の損失・温室効果ガス排出・人権侵害を引き起こすパーム油発電のために使われていることを知っていますか?

消費者としての声を経済産業省に伝えますので、署名とシェアにご協力いただけると幸いです!

熱帯泥炭地と気候変動

熱帯泥炭地は,熱帯の地下水位の高い湿地で樹木の枝や葉などが炭化され数千年間蓄積した土地で、膨大な温室効果ガスを地中に含んでいます。特に東南アジアのボルネオ島やスマトラ島に多く見られ、その土壌の上に多くの熱帯林が形成されています。(「熱帯泥炭地と気候変動」参照

これまでにインドネシアの熱帯泥炭地の多くが開発され、残された熱帯泥炭地も開発の危機に面しています。ボルネオ島の泥炭湿地林は1920年頃に比べて6割が失われ、WWFによると2005~15年の10年間で250万haが消失するなど開発のスピードは加速しています。世界有数の熱帯泥炭地を保有するインドネシアは、開発による土地利用変化に伴う温室効果ガス排出量が年々増加しており、USAIDの2013年のデータでは国全体の65%以上を占めました。

開発に伴う乾燥化が森林火災の延焼も招いています。2015年にインドネシアのスマトラ島とボルネオ島で起こった大規模森林火災では、東京都の面積約12個分となる260万haの熱帯林が焼失しました。森林火災に伴うCO2排出量は9月からの1か月半だけで16億トン余りと推定され、これは日本の年間温室効果ガス排出量を上回る数字なのです。

熱帯泥炭地開発の要因とパーム油発電

熱帯泥炭地の主な開発には、アブラヤシプランテーションへの農地転換やアカシアプランテーションへの産業用植林地転換などが挙げられます(「パーム油の問題」参照)。アブラヤシから生産されるパーム油は、インスタント麺やマーガリン、スナック菓子などの植物油脂、石鹸、洗剤、化粧品等にも使われ、世界で最も生産されている油です。アカシアプランテーションからはコピー用紙、トイレットペーパー、ティッシュペーパー等が生産され、これらは私たち日本の消費者ともつながりが深いと言えます。

様々な用途で使用できるパーム油ですが、日本では最近バイオマス発電としての用途に関心が集まっています。日本では2012年に、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束する制度)がスタートして以来、再生可能エネルギーによる発電の伸びが顕著となり、環境エネルギー政策研究所によれば2017年に太陽光発電は累積設備容量が4,280万kWと世界第2位となりました。2016年には電力の小売全面自由化が始まり、全ての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになったために多くの発電事業者が参入するようになりましたが、安定した収益が見込める固定価格買取制度がこの流れを後押ししていることは間違いないでしょう。

固定価格買取制度の対象となる再生可能エネルギーには、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電などがありますが、その内バイオマス発電は、木質バイオマスや農作物の残渣等をエネルギー源として発電するもので、中山間地域での未利用の間伐材や製材工場の残材などを有効に用いて売電収入が得られれば、地域の林業振興と山林保全につながる可能性が大いにあります。

しかしながら、固定価格買取制度の買取価格などを検討する経済産業省の調達価格等算定委員会によれば、2017年3月末までの一般木材等バイオマス全体の認定量のうち,件数ベースでパーム油を含むものが52%。出力ベースで36%でした。また、PKS(アブラヤシの種の殻)を含むものは、件数ベースで34%、出力ベースで44%とパーム油とPKSを合わせると海外産であるアブラヤシ関連だけで大半を占めることになるのです。

パーム油発電が抱える問題点

アブラヤシプランテーションへの農地転換が熱帯泥炭地開発の主要因であることは前述した通りですが、国連環境計画(UNEP)の資料によれば、土地利用転換を考慮したライフサイクルアセスメント(LCA)を含めると、パーム油由来のバイオマス燃料が排出するCO2は熱帯林伐採時には化石燃料の8倍、泥炭地を開発したものであれば20倍に達すると指摘されています。

また、地表の数%を占めるにすぎない熱帯林には地球上の生物種の半数以上が生息しており、ボルネオ島の熱帯林1ヘクタールあたりの木の種類は400種とヨーロッパ全土よりも多いのですが、プランテーション開発は熱帯林を皆伐して行われるため、希少な野生生物が生息し続けることは不可能になってしまうのです。

社会的な側面では、プランテーションでのずさんな管理の中での労働者の搾取や権利侵害、農薬による健康被害が多数報告されているほか、プランテーション企業と地域コミュニティの間の土地紛争、森とともに暮らしてきた先住民が住む土地の収奪など人権侵害の極めて悲惨な状況が各地で起きています。

バイオマスの国産材利用の観点からみますと、パーム油とPKSの調達先は100%が海外であり、そのほとんどがマレーシアとインドネシアです。NPO法人バイオマス産業ネットワークは、2017年11月に複数のNGO等の賛同を得て表明した「再生可能エネルギー固定価格買取制度バイオマス発電に関する提言」の中で、バイオマス発電の現状は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法1条」に記載されている固定価格買取制度の本来の目的である「エネルギーの供給に係る環境への負荷の低減、我が国産業の振興、地域の活性化」から逸脱している、と指摘しています。

2020年7月14日、国際環境NGO FoE Japanは、「バイオマス発電に関する提言~FIT法の目的である『環境負荷の低減』の実現を」と題する要請書を、経済産業省、資源エネルギー庁、農林水産省、林野庁、環境省宛てに提出しました。

パーム油発電に対するNGOのアクション

以上の問題を考慮して、ウータン・森と生活を考える会では、電気の小売業へ参入しようとする新電力会社の中からパーム油発電を利用している、または利用を検討していると思われる8社に対して「パーム油発電事業における熱帯林への影響について」と題した質問状を2017年7月に送付しました。質問状では、パーム油の仕入れ先や販売先、パーム油発電の熱帯林や泥炭地への影響、温室効果ガスの排出についての意識、環境への問題を認識した場合にはどのような対処を取るかなどを聞きました。なお、PKSについては「放っておいたら捨てられる資源を有効活用している」との声もあることから、当会としての立場を議論する余地があると判断し、今回はパーム油発電に限定した質問状としました。

結果として6社から回答を得て、「質問状《パーム油発電事業における熱帯林への影響について》の企業回答及び考察と提言」としてまとめました。うち1社が「パーム油発電事業から撤退する」と回答しました。3社がアブラヤシの農園拡大が熱帯林や泥炭湿地の破壊を引き起こしていることについて「知っている」と答えたものの、農園拡大に伴う熱帯林・泥炭湿地開発によるCO2排出量が化石燃料によるものを遥かに上回るという報告については「知らなかった」と回答しました。パーム油のトレサビリティは国際的に明らかにされていない事例が大半であるため、各企業はアブラヤシ農園からの流通や販売ルートの状況把握を行い環境負荷がないことを証明すべきであるが、「環境問題・社会問題に配慮した持続可能なパーム油の生産方法の基準を定めたRSPO認証油 やトレサビリティの明確なパーム油を使用している」と回答した企業は1社にとどまりました。

以上の回答から、熱帯林及び泥炭地破壊によるCO2排出を認識していない電気事業者が大半であることがわかりました。現行の制度を続けることは、日本の適切な再生可能エネルギー普及の妨げとなり、気候変動をさらに加速させることにつながる可能性があります。

 そのため、ウータン・森と生活を考える会では、固定価格買取制度を運用する経済産業省、資源エネルギー庁、および調達価格等算定委員会に対して、「パーム油を固定価格買取制度の対象から外すよう要求する提言書」を2017年11月28日に郵送しました。

パーム油発電の現状は…

その後の経過として、(パーム油が該当する)液体バイオマスの調達には第三者認証など何かしらの基準が求められるようになった他、調達価格は入札制となり、企業にとっては参入が難しい状況となりました。

しかしながら,2018年 12月現在、 FITの認定を受けたパーム油発電所計画は178万kWで、すべてが稼働すると、年間 340万トンものパーム油が燃やされることとなります(FoE)。日本のパーム油の輸入量 75万トンであることを考えると、これが5倍になり、大きなインパクトとなります。

アブラヤシプランテーションは明確に世界の熱帯林減少の大きな要因となっており、今後も東南アジアのみならず南米やアフリカへの拡大が懸念される以上、プランテーション開発を推し進める要因となりうるパーム油発電そのものを取りやめるべきです。また、アブラヤシ殼であるPKSによるバイオマス発電についても、売れることがわかれば企業は生産を拡大する可能性が高くなり、開発が推し進められる構造はパーム油と同じであると考えられるために、多くの日本のNGOと同じく、ウータン・森と生活を考える会も反対の立場をとっています。

日本では、エナリスによる茨城県北茨城発電所(15MW)、茨城県ひたちなか市の常陸那珂発電所(23MW)、神栖パワープラント合同会社による茨城県神栖市における発電所(38.85MW)、三恵エナジーによる「三恵福知山バイオマス発電所」(2MW )がすでに稼働し、「三恵福知山バイオマス発電所」では周辺の住民が悪臭・騒音に長年悩まされてい、被害を訴えていました。また、隣の舞鶴市では、福知山市の40倍ものパーム油発電所建設計画があることが判明しました。

舞鶴・福知山の地域住民と問題に関心を持つ全国の市民・NGOが協力し、署名活動、のぼり旗の設置、発電事業者へ融資する金融機関へのダイベストメント(投融資の引き揚げ要求)などを精力的に行なってきました。その結果、2020年6月に舞鶴市で計画されていたパーム油発電事業計画は、事業主体のamp社、工事請負の日立造船、舞鶴市長が次々に事業の断念を表明し、事業は白紙撤回されました。また、2020年12月には、福知山市で地域住民を悩ませていた三恵バイオマス発電所が事業を停止すると表明しました。署名などみなさまのお力のおかげです。

しかし、2021年1月に宮城県角田市で大手旅行会社H.I.S.の子会社がパーム油発電事業を開始、石巻市や群馬県でも事業計画がある。パーム油以外にも、認証が偽装された疑いのある木質ペレットのベトナムからの輸入、大木が切り倒された北米からの輸入などバイオマス発電が抱える課題は絶えません。

 ウータン・森と生活を考える会では、今後もパーム油発電や輸入バイオマス発電の問題について、情報を収集し、全て無くなるように働きかけていきますので応援をよろしくお願いいたします。

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