日本は国土の66%を森林が占める先進国でも数少ない森林国です。しかし、私たちのまわりに日本の森林からきたものはどれだけあるでしょうか? 今座っている椅子、机、家の柱や床、ベッドなどの木材はいったいどこから来たのでしょうか。
日本では、戦後の「拡大造林政策」に伴い、広葉樹である天然林が伐採され、針葉樹中心の人工林へ置き換わっていきました。1964年に木材輸入が 全面自由化となり、外材(外国産の木材)輸入が始まったことを契機に、国産材の利用率が急激に減少していきました。(*1) 1960年代当時、外材は国産材より安く、大量のロットで安定的に供給できるメリットがありました。そのため国産材の木材価格が急落し、 最盛期の1/4まで価格が低下しました。(*2) それにより日本国内の林業が衰退し、日本の人工林の木が市場に上がることなく日本の森林の荒廃が目立つようになりました。 日本の荒廃した人工林は災害が起きやすく、動植物の生態系のバランスも崩れた森です。
日本は全国的に十分な降水量があるため、どこでも木が育つ風土です。実は世界の中で、放置すると森林になるという場所は そう多くはありません。それに加え、南北に長いことにより水平方向、垂直方向共に多様な気候帯に応じて、植生も多様になります。 そのため、古くから森の恵みを受けながら生活し、木の文化を築いてきました。広葉樹は家具などの材や薪炭用として利用され、 針葉樹は成長が比較的早くまっすぐ伸びるため住宅などの建材として用いられてきました。
WRI(世界資源研究所)の報告によると、世界の原生林は文明が始まったとされる8000年前に比べて、8割が消滅していると報告されています。20世紀後半、熱帯地域の開発途上国では爆発的に人口が増加しました。それに先進国での消費の増大が加わり、多くの森林が農地や牧草地に変えられていきました。
現在、世界の森林面積は40億haで地球上の陸地面積の約31%と言われていますが、1990年から2010年までで1億3500万ha減少したと 推定されています(*3)。特に森林消失面積が大きい国はブラジル、インドネシア、アフリカの熱帯諸国です。熱帯気候と豊富な降水量 により国土の大半が森林に覆われていましたが、20世紀に入って急速に森林が失われてきました。また森林面積の減少だけでなく、 伐採により立木の密度が低下するなどの劣化した森林も大きな問題となっています。
同じ頃、日本は東南アジア原産材である南洋材、特にインドネシアとマレーシア材を20年以上にわたり輸入し続けた最大の輸入国でした。 輸入された南洋材はコンクリートの型枠などとして使い捨てされていました。また、他国で加工された家具などとしても商社を通じて 数多くの木材製品が輸入されています。2000年の木材(用材)自給率は18%とほとんどを外材に頼る状況となりました。 また、この時には違法伐採による木材もかなり含まれていたといいます。そして、森林保全の気運が世界的に高まり、規制により原産地 からの輸入が難しくなったことで、南洋材の輸入量は1/20まで低下しました。
東南アジアの熱帯林は、私たちの生活のために消えてしまったのです。
日本では2012年現在でも木材(用材)自給率は28%です。2009年より林野庁によって合法材普及事業が始まりました。現在、森林を適切に 管理し、そのような森林から生産された木材を使って製品を作り、流通させ、消費者に届ける、このように森林の望ましい管理方法と、 その森林に由来する製品を認証する「森林認証」という制度があります。FSC認証などがあります。 これらのマークの入った製品は「適切に管理された森林」に由来する「環境配慮された商品」である可能性が高いと言えます(森林認証にも問題点が多く指摘されています)。
また、何よりも日本の国産材を利用することは、日本の森を守り、ひいては世界の森を守ることに繋がります。森林認証マークの入った 商品、国産材を利用した商品を私たちが選ぶことで世界の森林保全に貢献できる可能性があります。
ウータン・森と生活を考える会は、1988年に活動を開始。前年にボルネオ島のマレーシア・サラワク州の熱帯林に暮らす先住民が日本にやってきて「私たちの森をこれ以上壊さないでくれ!」と訴えたました。調べると、身近な家具や合板などに熱帯材が使われ、学校の箒や選挙ボードにも使われていました。学校の先生や公務員などの市民が「私たちの生活を見直し、森で生きる先住民の生活のことを共に考えよう」と始まった活動が会の原点です。
2016年に排出された温室効果ガス(GHG)全体の内訳をみると、約500億トンの排出のうち、製鉄や石油化学等産業のエネルギー由来の排出が24%、農業・牧畜・農地転換が22%、建物が17%、交通が16%、廃棄物が3%ほどとなっています(Our World in Dataより)。驚くことに、建物や交通のエネルギーからの排出よりも、農業・畜産業からの排出の方が多いのです。特に家畜の糞尿からのメタン排出と化学肥料の過剰投与による亜酸化窒素(N2O)の排出が多い。つまり、牛・豚・鶏などの肉やプランテーション(大規模単一農園)で作られた農作物の消費が気候変動の大きな原因となっているのです。そして牧畜や大規模農業の土地転換の多くはアマゾンやボルネオ島・スマトラ島・ニューギニア島などの熱帯林で起こっています。
ラジ・パテルの著書「肥満と飢餓:世界フード・ビジネスの不幸のシステム」によれば、世界で生産される穀物の3分の1は家畜の餌となり、その肉は先進国の消費者の胃袋へと運ばれています。70億人を養える量の穀物はすでに世界にあるが、それは途上国の人々へ行き渡らずに10億人近くの飢餓を生み出しているとあります。
現在、世界に77億人の人間、15億頭の牛、10億頭の豚、300億羽の鶏が家畜として存在する(野生動物の数は10億頭以下)と言われています。そこでは身体拘束、薬物投与等の虐待行為が常態化している。牛・豚・鶏が痛みや恐怖を感じることも親子の愛情が深いことも様々な実験により報告されています。生物との関わり方を見直さない限り、気候変動によってしっぺ返しを食らうのは、私たち人間という種そのものではないでしょうか?
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書では、「気候システムの温暖化に疑う余地はない」「人間活動が原因である可能性が極めて高い」とされ、「世界の平均気温は今後何も対策を取らない限り、2100年までに4.8℃まで上がる可能性がある」という報告がなされました。気候変動が進めば、最も被害を受けるのはツバルなど太平洋の小さな島嶼国の人で、すでに巨大な台風がフィリピンを襲い、旱魃がサブサハラ・アフリカ諸国から水と食料を奪っていますが、彼らはほとんどGHGを排出していません。また、多くGHGを排出している現代の人の活動の結果、被害を受けるのは次に生まれてくる世代の人々です。
現在、東南アジア熱帯林破壊の最大の原因は、熱帯林を皆伐して大規模に作られたアブラヤシ農園から採られるパーム油です。パーム油は、スナック菓子、インスタント麺、マーガリン、洗剤、石鹸、化粧品など私たちの身の回りの安価な商品に多く使われています。しかし、私たちが100円で買えるポテトチップスには、先住民や農園労働者への人権侵害、生物多様性の損失、泥炭地破壊による温室効果ガス排出などのコストは含まれていません。
そのような環境問題は、他国の社会的弱者を苦しめ、次世代が平和に豊かに暮らすことのできる機会を奪い、多くの動植物を絶滅に追いやっています。すなわち、金と権力を持った現世代の先進国の人々による搾取の問題だと言い換えることができます。それを解決し、持続可能な社会を目指すのであれば、国家間差別、世代間差別、種差別を改めなくてはならず、小手先の対策ではなく人々の意識そのものが変わる必要があるでしょう。
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