輸入木質バイオマス発電事業を行う20社及びプロジェクトファイナンスを行う金融機関20行のCO2排出量を計算し、事業の見直しを求める要請書を送付しました

ウータン・森と生活を考える会プランテーション・ウォッチMighty Earth熱帯林行動ネットワークFair Finance Guide JapanFridays For Future Sendaiの6市民団体/環境NGOは、3月8日に、輸入木質バイオマス発電を行う事業者20社(FIT制度で認定済みで、50,000kW以上を合計した容量順)に対して事業の見直しを求める要請書を、プロジェクトファイナンスを行う金融機関20行に対してエンゲージメントの実施及び投融資の見直しを求める要請書を送付しました。

木質バイオマス発電は、「木が成長する過程で大気中のCO2を吸収するのでカーボンニュートラルである」との主張がありますが、バイオマス燃料が燃える際に温室効果ガス(GHG)が即時に排出され、排出係数は石炭火力発電を上回ります【解説資料】 バイオマス発電のCO2排出量 )。

また、多くの研究者が「樹木を伐採し燃やすことで数十年~数世紀にわたり温暖化を悪化させる」と報告するなど、吸収には相当な年月がかかります石炭より悪い輸入木質バイオマス~森林保全による炭素固定の重要性 )。伐採後に適切な再植林が行われない場合、自然が回復せずにそもそも吸収されないという意見もあります。実際に私たちは2022年にアメリカとカナダ・ブリティッシュコロンビア州の木質バイオマス燃料を生産している現場を訪れ、原生林や老齢の天然林が燃料生産のために切られている様子を確認しました(ウェビナー「木質ペレット生産の森林生態系への影響ー米国南東部の事例からー」)(オンラインセミナー「カナダ・ブリティッシュコロンビア州の林産業・木質ペレット生産現場 視察報告」)。

今回、私たちは、FIT制度で認定された50000kW以上の規模のバイオマス発電について、”燃焼を含めた”CO2排出量を算出しました。バイオマス発電を行う事業者は、トップの関西電力が3つの発電所合計容量約25万kW、CO2排出量は274万トンでした。以下、大阪ガス、東京ガス、中部電力、三菱商事、九州電力、レノバ、住友商事、石油資源開発、イーレックスなど大手電力会社、大手ガス会社、総合商社が2社、新興の再エネ企業などがランキングに入りました。


事業者別のバイオマス発電容量及びそのCO2排出量
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バイオマス発電のプロジェクトファイナンスを行う金融機関は、トップの三井住友フィナンシャルグループが8つの発電所合計約73万kWに融資しており、CO2排出量は約800万トンに達します。以下、みずほ、三井住友トラスト、三菱UFJ、山口銀、いよぎん、りそな、第四北陸銀、横浜銀行コンコルディア、日本生命などメガバンク(公的・民間)、地銀、生保などがランキングに入りました。

今回送付した要請書では上記の問題を指摘した上で、発電事業者に対して「GHGプロトコル、SBTiで燃焼の排出をカウントするのか?」「燃料調達時のトレーサビリティをどう確保するか?」「問題があると認識した場合に事業の見直しを行うのか?」、金融機関に対して「木質バイオマス発電事業に関するポリシーを策定する予定はあるのか?」「発電事業者にどのようにエンゲージメントするか?」等を質問し3月24日までの返答を求めました。

【解説資料】GHGプロトコルでの排出算定方法 Fact Sheet

近年の円安や輸送コスト高によって、バイオマス燃料の調達費用は高騰しています。2022年9月にはパーム油発電事業を行っていたHISスーパー電力が債務超過に陥り、事業を手放しました。木質ペレットの最大生産国ベトナムでは、輸出事業最大手のAn Viet Phat Energy社が認証詐欺を行っていたことが判明し、FIT制度における合法性を担保していたFSC認証制度から排除されました (その後に新しい記事「東洋経済オンライン:バイオマス燃料の認証偽装、エネ庁が本格調査へ 独自取材で判明した「納入先の発電所」実名が6/26公開)

木質バイオマス発電所の多くは未稼働であり、事業の見直しは可能です。引き続き、発電事業者や金融機関と対話を続けていきます。

本件のお問い合わせ先:

contact-hutan@hutangroup.org

050-5876-7925

(ウータン・森と生活を考える会 担当:石崎)