プロスペックAZ株式会社、みずほリース株式会社、中部電力株式会社が出資している「渋川バイオマス発電合同会社」は、群馬県渋川市伊香保町水沢地区において、固定価格買取制度(FIT)の売電による木質バイオマス発電事業を展開しています。
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「ウータン・森と生活を考える会」と「水沢・伊香保町の未来を考える会」は、下記理由により、プロスペックAZ、みずほリース、中部電力に対して群馬県渋川市でのバイオマス発電事業見直しを求める要請書を2025年6月10日付で郵送しました。
同時に、各種公開資料等から、プロスペックAZ株式会社、みずほリース株式会社、中部電力株式会社の株主や運用機関、融資銀行と想定できる金融機関等に対して、渋川バイオマス発電合同会社、及びプロスペックAZ株式会社、みずほリース株式会社、中部電力株式会社に対するESGエンゲージメント(環境・社会・企業統治に配慮するよう対話と働きかけを行うこと)の強化を要請し、改善が見られない場合は投融資の見直し(ダイベストメント)を行うことを要請しました。
本要請書に対しての返答を、2025年6月23日までに求めております。
理由1:水沢うどんなど、県内屈指の歴史ある観光地としての価値が毀損される
渋川市伊香保町水沢地区は、全国的にも有数な温泉として愛される伊香保温泉があり、水澤観音やうどん屋街などに年間100万単位で観光客が訪れる群馬県にとって最も大事な観光地です。
水沢の生命線である美味しいお水は限りがあり、時期によって渇水もするため、この地では水源の確保と分配に苦労をしてきました。繁忙期に不足がちになる水を、住民が望まないバイオマス火力発電に奪われることは許されません。万が一、水沢の水が出なくなれば、取り返しのつかないことになります。
群馬よいとこ観光振興条例では、豊かな自然、温泉、歴史、文化、食、産業等の本県の魅力を再認識し、誇りを持つとともに、観光資源として有効な活用を図ることとあり、百年もの歴史ある観光地でのバイオマス発電事業は、条例にそぐわない事業であるといえます。
理由2:バイオマス発電所からの悪臭・騒音被害、爆発事故や交通リスクにより住民の生活が脅かされる
近年、木質バイオマス発電所での事故が頻発しており、鳥取県米子市の「米子バイオマス発電所」では粉塵爆発によりボルトが民家へ飛散しました。米子市の住民からは、以前から夜間の騒音への苦情が寄せられており、発電所を運営する会社が実施する周辺の住宅の防音対策について、立地を仲介した米子市も必要な費用の半額を負担することになりました。京都府福知山市では、2017年に稼働したパーム油を 利用したバイオマス発電所からの悪臭と騒音による被害を訴える住民が続出し、2020年7月には 住民から公害調停が申し立てられ、同年12月に発電所は廃止されました。
自然豊かな水沢地区は、鹿、キツネ、タヌキ、リス、熊など色々な動物が棲息し、夜はフクロウ、朝にはウグイスなど色々な鳥の鳴き声が聞える素晴らしい場所です。24時間稼働で機械音がする所には、 動物は住めなくなる可能性があります。また、燃料の木質チップを遠方から毎日運送する大型トラックによる交通事故のリスクや、排出するNOx、SO2、ばいじん等排気ガスからの健康被害が懸念されます。
理由3:森林破壊と大量の温室効果ガス排出が懸念される
渋川バイオマス発電合同会社は1,990kWの発電所で、同規模の信州ウッドパワーは約3万トンの原木を使用するとしています。大量の木材を生産するために、環境や生態系への負荷や、コストの上昇を招いて林業関係の企業を圧迫するなど負の影響が懸念されます。
また、木質バイオマス発電は、バイオマス燃料が燃える際に温室効果ガス(GHG)が即時に排出され、専門家の試算では排出係数は石炭火力発電を上回ります。吸収には相当な年月がかかりますし、再植林がなされずに放置されるケースも多くみられます。バイオマス発電は「カーボンニュートラルではない」ために気候変動への大きな脅威となります。
長野県塩尻市の信州F・パワープロジェクトや兵庫県朝来市の朝来バイオマス発電所を始め、木材料の燃料不足から、木質バイオマス発電所の稼働停止が続出しています。なお、本事業での燃料は、邑楽町のグリーンマテリアルから調達するとの情報があります。過剰な伐採のリスクは、環境や地域住民への人権配慮のみならず、経済的な持続性からも事業のリスクが高いと思われます。
【渋川バイオマス発電所の概要】
渋川バイオマス発電合同会社
群馬県渋川市伊香保町水沢字植木原83番4
発電出力:1,990kW
出資会社:中部電力(50%)、エムエル・パワー(40%)、プロスペックAZ(10%)
主な要請書送付先:
事業者:
中部電力、みずほリース、プロスペックAZ
金融機関:
みずほフィナンシャルグループ
三菱UFJフィナンシャル・グループ
三井住友フィナンシャルグループ
北洋銀行、京葉銀行、千葉銀行
三井住友トラストグループ、農林中央金庫、
信金中央金庫、みずほ信託銀行、
丸紅株式会社、リコーリース株式会社
第一生命、明治安田生命
ヒューマンリソース&アール、DOWAホールディングス
日本マスタートラスト信託、日本カストディ信託
ステートストリートバンク、JPモルガン・チェース
返答先及び本件に関するお問い合わせ先:
E-mail:contact-hutan@hutangroup.org
ウータン・森と生活を考える会 担当:石崎雄一郎( 080-8293-5006 )