【共同プレスリリース】インドネシアの熱帯林を破壊するバイオマス発電は「重大なESGリスク」   環境NGOのエンゲージメント要請に対し、国内外の主要株主・金融機関から懸念相次ぐ

ゴロンタロ州のペレット工場向けの伐採地(c)Auriga Nusantara

 報道関係者各位

2026年9月1日

ウータン・森と生活を考える会

【共同プレスリリース】

インドネシアの熱帯林を破壊するバイオマス発電は「重大なESGリスク」

環境NGOのエンゲージメント要請に対し、国内外の主要株主・金融機関から懸念相次ぐ

 

ウータン・森と生活を考える会、プランテーション・ウォッチなどの環境NGO 5団体ら(末尾に記載)は、2026年4月、「生物多様性ホットスポット」インドネシア・スラウェシ島の木質ペレット生産・調達に関与する、阪和興業および東京ガス株式会社の主要株主(国内外の金融機関71社)に対し、「ESG エンゲージメント及び投融資の見直し(ダイベストメント)を求める要請書」を送付しました。

本要請に対し、日本のメガバンク、大手生命保険・損害保険会社、そして世界有数の規模を誇る資産運用会社から多数の回答および直接面談の機会が寄せられました。回答数は、国内金融機関が12社(14社中(回答率約86%))、海外金融機関が8社(57社中(回答率約14%))です。

連名団体はこれまで投資家・金融機関に対して、木質バイオマス発電の問題について継続的に対話してきました。今回の国内金融機関の回答率は極めて高く、本事業に対する危機意識の広がりを示しています。

回答や面談を通して、本事業が抱える熱帯林破壊と人権侵害リスクが、もはや「NGO側の懸念」にとどまらず、国内外の投資家・金融機関にとっても、企業の財務やステークホルダーに重大な影響を与える、「気候・自然資本・人権リスク」として認識されていることが明らかになりました。一部では実効的なアクションに向けたエンゲージメントも行われています。

阪和興業は、スラウェシ島・ゴロンタロ州のペレット工場(PT. Biomasa Jaya Abadi:BJA)に20%出資し、生産されたペレットを日本や韓国向けに販売。その一部が、東京ガスの富山県・伏木万葉埠頭バイオマス発電所で燃やされています。

両社には、投資家・金融機関の懸念を受け止め、危機の回避に向けた迅速な行動が求められます。

投資家の回答は下記まとめ、阪和興業・東京ガスへの提言(求められる行動)は本文後半をご覧ください。

 

【実施時期・方法】

・時期:要請書発出(4月1日)後、4月中旬から6月上旬にかけて実施

・方法:メールや書面(PDF)での回答、オンラインまたは対面での対話を通してヒアリング

・要請書を送った金融機関:金融情報システムを用いて阪和興業・東京ガス両社の株主を調べ、持ち株比率の上位を中心に絞り込んだ。社名は要請書末尾に記載。

 

【投資家・金融機関の回答まとめ】

①要請内容に関するオンラインまたは対面での直接対話を実施:4社

・【国内A社(運用会社)】:当該ペレット生産事業について、「EIA(環境影響評価)が未公開であること」「絶滅危惧種への影響」「人権への影響(洪水被害など)」など、現場の実態と阪和興業の建前との乖離について深い質疑を実施。投資家側から「現実に企業に何を要求していくべきか(EIA公開やTNFD開示、伐採・調達の即時停止か段階的停止か)」について戦略のすり合わせを求められ、今後の「投資判断に生かす」との発言がありました

・【国内B社(保険会社)】:「天然林伐採に伴う水害・洪水リスク(災害リスク)」に強い関心。固有種・絶滅危惧種に対する悪影響と合わせて、こうしたリスクが明らかにも関わらず企業が出資判断を行っている現状を踏まえ、阪和興業のガバナンス(リスク判断の体制)に疑問を呈する見解も示されました。

・【国内C社(運用会社)】:すでに阪和興業に対してエンゲージメントがなされたと説明がありました。投資家として企業を追及するために、「常に鮮度の高い現場の情報が欲しい」という切実な要望を受けました。

・【国内D社(銀行グループ)】:NGOからの説明を受けて、当該伐採エリアの森林が、「原生林ではないが、絶滅危惧種が多く、保護価値の高い森林(HCV)である」との認識を共有し、今後のポリシー改訂やエンゲージメント等において、HCVを重視する意向が示されました。

 

②自社の厳格な方針や具体的なアクションを明言:6社

・【海外E社(運用会社)】:「認証制度や合法性証明等に依存するだけでは現場のリスクは防げない」として、要請書の懸念事項に完全同意。環境・人権リスクに関するガバナンスと情報開示の透明性について、東京ガスの取締役会と直接エンゲージメントを行う意向を示しました。

・【国内F社(銀行グループ)】: 木質バイオマス発電を「負の影響を助長する可能性が高いセクター」と認識。「環境・社会課題の未対応により事業継続に重大な影響が出る場合は投融資を行わない」というリスク管理/スクリーニングの基準を提示しました。

・【海外G社(銀行グループ)】:「一次熱帯林の伐採」や「高炭素貯留林(HCS)の転換」等を伴う事業には「資金提供しない(will not finance)」と明言。NGOからのレポートもクライアント対話のスコープに含めると回答しました。

・【海外H社(銀行グループ)】:バイオマス事業への融資には「赤道原則(EP4)」に基づく「FPIC(住民の事前の自由な同意)」の取得が必須であるとの見解を示しました。

・【国内I社(運用会社)】: インドネシアの木質バイオマス生産・調達における熱帯林破壊や人権リスクの懸念を公式に表明。「事業主体による継続的な情報開示」「第三者による検証」「(地域社会を含む)ステークホルダーとの対話」が不可欠であるとの見解を示しました。

・【国内J社(銀行グループ)】: 森林・木質バイオマス発電を、投融資に際して「留意が必要な事業」とし、燃料の持続可能性、ライフサイクルGHG排出量を考慮し、重大な負の影響を回避するよう務めると回答しました。また、森林セクターの投融資先に対してNDPE(森林破壊・泥炭地開発・搾取ゼロ)FPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)の遵守を要求するとしています。

※これ以外の10社は、個別案件・顧客に関する回答はできないという主旨の回答でした。

 

【国内外の株主・金融機関の懸念を踏まえた阪和興業・東京ガスへの要請】

阪和興業株式会社に対して提出した情報公開の要請書(3月16日付)では、

-BJAに木材を供給するBTL およびIGL の事業実施地(伐採エリア)の環境影響評価(EIA)の公開 

-これらのエリア内に生息することが確認された固有種および絶滅危惧種のリストの開示 

-種の保全や生態系の保全・回復措置についての詳細な説明 

-伐採エリア周辺のコミュニティに対する、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)の手続きに関する具体的記録の開示

を求めました。 

しかし、法的義務であるはずのEIAの公開はされずその他の質問に対しても十分な回答はありませんでした(同社の回答525日付)及びNGOによる回答の要点抜粋)。また、「地域社会の意見を適切に反映している」「住民協議(パブリック・コンサルテーション)は実施されている」との回答とは裏腹に、具体的情報は開示されず、事業の影響を受ける地域では村人による抗議が繰り返されいます。直近の5月に行われたデモでは6名の逮捕者が出ており、警察の法的措置を恐れた一人の女性が服毒し自殺未遂を図る事態となりました。  

 

国内外の株主・金融機関の懸念も踏まえ、阪和興業に対して以下の行動が求めます。

– 木質ペレット生産のための熱帯林伐採の即時停止

– 事業地(伐採エリア)の環境影響評価(EIA)の公開

– 固有種・絶滅危惧種のリストおよび保全措置の詳細な説明

– 住民協議/FPICの実施記録の公開、住民との軋轢の解消に向けた措置

東京ガスとしても、持続可能性・法令遵守・人権尊重の観点から、このような状況で調達を継続することは許されません。調達を即座に停止した上で、上述の行動をサプライヤーに求め、適切な対応が見られない場合、調達を見直すべきです。

日本の再生可能エネルギーが、インドネシアの貴重な生態系と人々の命・生活基盤を破壊して成り立つことは、気候変動対策として完全に破綻しており、到底責任あるビジネスとは言えません。連名団体は今後も、熱帯林破壊や人権への負の影響のないエネルギーシステムを目指して、投資家・金融機関、関連事業者との対話を継続してまいります。

 

【最新の状況報告】

  • 1万筆超(6月17日時点)の反対署名を阪和興業と東京ガスに提出:ウータン・森と生活を考える会は、国内外から集まった「熱帯林をバイオマス発電のために燃やさないで!」とする本事業への反対署名を、阪和興業および東京ガスへ正式に提出し、即時の伐採停止を要請しました。

<オンライン署名>(2026年8月24日現在 14,094筆) https://t.co/0jZ953uHxM

 

  • 東京ガス定時株主総会での指摘と経営陣の対応:日刊工業新聞の報道によれば、6月26日の東京ガスの定時株主総会において、環境保護を重視する株主から「インドネシア産バイオマス燃料が現地の森林破壊や地元住民の人権侵害につながっている」「激しい抗議活動が行われ、逮捕者も出ている」との指摘が上がりました。これに対し同社の担当役員は「遺憾であり、重く受けとめている。現地の燃料事業者にはそうした課題の解決を図るよう、働きかけたい」と応じました。

<日刊工業新聞 (2026年6月26日付)> https://www.nikkan.co.jp/articles/view/785237

 

  • 日・インドネシア森林保全シンポジウム2026での指摘と議論(7月23日):シンポジウムにおいて、現地NGOや研究者より、本事業に伴う1.4万ha超の森林破壊や度重なる洪水被害、住民への人権侵害の実態が改めて報告されました。一方、資源エネルギー庁からは2026年度からの大規模木質バイオマスに対する新規FIT/FIP支援の廃止方針や持続可能性基準の厳格化が示され、登壇した金融機関からも、環境・人権配慮が不十分な事業には投融資を行わない厳格な方針が表明されました。

<日・インドネシア森林保全シンポジウム2026>

https://www.gef.or.jp/news/event/260722-23japan_indonesia_forest_symposium/

 

【要請書および本プレスリリースの連名団体】

ウータン・森と生活を考える会

プランテーション・ウォッチ

熱帯林行動ネットワーク

マイティー・アース

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)

泊みゆき(バイオマス産業社会ネットワーク理事長)

 

【本件に関するお問い合わせ先】

一般社団法人ウータン・森と生活を考える会

理事:石崎 雄一郎

contact-hutan@hutangroup.org

 

【プレスリリース】莫大な温室効果ガスを排出する住友商事の仙台「輸入バイオマス発電」事業のESGリスクに投資家が懸念〜金融機関36社中8社とNGOが対話を実施、6社は住友商事へのエンゲージメントを実施または予定と回答〜

2022年9月8日

ウータン・森と生活を考える会

Mighty Earth

プランテーション・ウォッチ

熱帯林行動ネットワーク

Fair Finance Guide Japan

Fridays For Future Sendai

・森林/生物多様性や気候変動の問題に取り組むNGO/市民団体5団体は、2022年3月に、バイオマス発電事業と北米における木質ペレット製造事業に関与している住友商事株式会社(以下、住友商事)に投融資していると想定される、日本国内の機関投資家/融資機関36社に対し、住友商事へのエンゲージメント及び投資撤退(ダイベストメント)を行うことを要請し[i]、その結果をまとめました。

・日本国内の金融機関36社のうち、23社からメールや電話にて回答を得ました。うち8社とオンラインでの対話を実施しました。6社が住友商事に対するESGエンゲージメントを実施済みまたは実施予定と回答しました。また、18社は自社で策定した/または加盟しているESGに関する方針・計画/イニシアティブ等[ii]に基づいて行動していくと回答しました。

・対話した金融機関からは、「ESGを重視した投融資が重要であり、NGOからの現地情報は有益であった。大規模な輸入バイオマス発電は、想像していた以上にGHG排出や生態系への影響が大きいことがわかった。今後もNGOとの対話を行いたい」などのフィードバックを得ました。

・2022年7月には、仙台港バイオマスパワー合同会社(住友商事を中心とした共同出資)による11.2万kW(国内最大規模)のバイオマス専焼火力発電事業が着工されたと報道されました[iii]

・住友商事は、バイオマス発電の燃料となる木質ペレットの北米からの輸入最大手の一つですが、米国南東部は広大な米国の中でも最も豊かな森林を有する地域といわれています。ノースカロライナ州には広葉樹と針葉樹の混交林や海岸沿いの湿地林が広がり、ブラックベア、ボブキャット、コヨーテなどの貴重な生息地です。しかし、木質ペレット生産のために伐採が進んでいます[iv]

・各国の科学者・NGO・メディアは、「バイオマス発電はカーボンニュートラルではない」として、温室効果ガス(GHG) 排出による気候変動への悪影響の懸念を表明しています[v]。生産、加工、輸送、そして燃焼の段階も含めたライフサイクルのGHG排出は、森林が再生しなかった場合、石炭火力と比べておよそ2倍になります。

・本事業と同様に、FIT制度(固定価格買取制度)で認定されたバイオマス発電事業は日本全国に700以上あり、輸入燃料に依存する大規模なバイオマス発電事業は200を超えます。これらの発電所が稼働すれば、莫大な温室効果ガス排出により気候変動が加速し、木質ペレット生産地である北米をはじめ、世界の森林の減少・劣化を招き、生物多様性が脅かされる危険性がますます高まります。

・輸入バイオマス発電事業は、今後、石炭火力発電と同様に座礁資産化するリスクが高くなっていくことが予想されます。私たち森林/生物多様性や気候変動の問題に取り組むNGO/市民団体6団体は、住友商事に対して、仙台港での輸入バイオマス発電事業の即時中止を求めています。

・また、金融機関に対して、住友商事の仙台港での輸入バイオマス発電事業を見直すよう住友商事に対してエンゲージメントを行うことを引き続き求めていくと同時に、他の輸入木質バイオマス発電事業者に対しても、同様のエンゲージメントを行うことを要請します。また、今回の要請に回答が無かった金融機関に対しては、NGOとの対話を重視し、今後対話を実施するよう求めていきます。

 

本件のお問い合わせ先:

contact-hutan@hutangroup.org 

050-5876-7925

   https://hutangroup.org/

(ウータン・森と生活を考える会 担当:石崎)


[i] http://hutangroup.velvet.jp/db/pdf/20220311sumitomo.pdf

[ii] 責任投資原則(PRI)、日本版スチュワードシップ・コード、環境方針、人権方針、GHGネットゼロ目標、NDPE原則、赤道原則、ネットゼロ・アセットマネージャーズ・イニシアティブ(NZAM)、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラムなど

[iii] https://www.kensetsu-sinbun.co.jp/miyagi/article/bukken-area1/8983/

[iv] [Mighty Earth]新報告書「隠蔽の煙幕:住友商事の『カーボンニュートラル』失敗の数々」 

https://www.mightyearth.org/sumitomoclimatejp

[v] [500名以上の科学者]バイオマス燃料のための森林利用に関する書簡

http://ur0.work/DeW5

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