熱帯林消失と日本のつながり

私たちの生活に必要なもの、食べ物・衣服・住宅・乗り物これらはいったいどこから来るのでしょうか?私たちが普段使うものが 世界に与える影響、その反動を想像してみて下さい。 私たちは熱帯林から多くの恩恵を受けている一方で、熱帯林は急速に消失しています。

ストーリー1 生命を育む森—ボルネオ島の熱帯林と世界の森

地球上の約半分の生物が暮らす熱帯林。数千万の生き物がこの森から生まれます。1ヘクタールの広さにおよそ300種類の植物が織りなす 熱帯林を歩いてほとんど同じ樹に出会うことはありません。ボルネオ島には15000種の植物が生え、オランウータン、ギボン、テングザル、 等44の固有種を含む222種の動物やカエルや鳥が生息し、2007年にもボルネオの森で新種の動物が発見されました。

ストーリー2 熱帯林消失と日本の生活はつながっている

しかし、1900年に95%残されていた原生林は、2000年には50%以下に消失しました。いま、世界の熱帯で原生林が残っているのはボルネオ、 パプア・ニューギニア、アマゾン、コンゴ流域くらいだとも言われています。「それはひどい!」「でも、他の国で他の人々が やっていることだよね」・・・遠い世界でのニュースを聞けば、そう思うかも知れません。 しかし、実際には、熱帯林消失の責任は、日本にもあります。私たちが普段消費している多くの食品・製品は、熱帯林を破壊して 作られたものが多いからです。

例えば、スナック菓子などの食用油として多く使われるパーム油は、東南アジアのボルネオ島やスマトラ島などオランウータンの 棲む熱帯林を破壊して作られたプランテーション(大規模農園)で生産されています。また、自動車など様々なものに使われる銅や 携帯電話に使われるレアメタルは南米、東南アジア、アフリカの熱帯林の山を丸ごと切り取る方法(露天掘り)によって採掘されています。 それが時には、先住民がずっと「神が宿る」と崇めてきた山であることもあります。それだけではなく、使用された水銀などは垂れ流され、 近隣住民が病気になったり奇形児が生まれたりという事例が多く報告されています。

ストーリー3 大量消費のツケは見えないところで・・

「世界最大規模の環境破壊は肉を食べることだ」と聞くと不思議に思われるかも知れません。しかし実際には、アマゾンの森林喪失面積の 圧倒的部分は牧場と家畜用飼料の生産地になっています。ワールドウォッチ研究所のレスター・ブラウン氏によれば、アメリカ人が年間の 肉の消費を10%だけ減らせば、世界で6000万人の飢餓が救える穀物が生産されると指摘しています (ちなみにラジ・パテル氏は、世界の飢餓人口10億人と同じ数の肥満=食べ過ぎで不健康になっている人がいると指摘しています)。

目に見える食べ物や製品だけではありません。普段使っている電気も石炭・石油や大規模ダムから作られるエネルギーですが、その生産地は 悲惨な公害、人権侵害、汚職、環境破壊の温床となっています。その恩恵を多く受けているのは、言うまでもなく、私たち先進国の消費者です。

ストーリー4 消費者の責任から目を背けてはいけない

「焼畑が原因だって聞いたけど」・・・時々、無知な先住民が森林火災を引き起こすと誤解されることがあります。2002年には 、 ある石油メーカーが「焼畑をするパプアニューギニアの先住民にも生活がある」と、まるで彼らに責任を押し付けるような偽善広告を 新聞に掲載して問題になりました (しかも、使っていた写真は全く別の場所のものでした)。高度成長期には、石油系洗剤が琵琶湖を 汚染するとして、植物性の洗剤がもてはやされましたが、「環境にやさしい」と謳った洗剤は、パーム油生産のためにボルネオの熱帯林を 破壊していたのです。ちょっと想像してみれば、油、肉、洗剤、自動車、ガソリン、携帯電話、電気、その全ては私たち消費者が使って いるものだと分かります。この事実に目を背けてはいけません。

ストーリー5 一方で日本の林業は衰退していった

かつて日本はボルネオ島マレーシア・サラワク州から生産される木材の半分を輸入していました。多くの先住民は何百年も暮らしてきた 土地を追われ、時には逮捕され、時には拷問され殺されました。あるサラワク州の先住民が日本へ来た時に、飛行機からみる風景に びっくりしたそうです。「日本にはこれほど森があるのか!」彼は日本には全く木がないために、たくさんサラワクから木材を輸入 していると思っていたのです。しかし、日本ではかつて人口増に対応するためにとっていた造林政策を転換、さらに安い熱帯材を 輸入し始めたために木は伐採されず、それまで人の手が入っていたことで整備されていた森林がどんどん荒廃していきました。 「安い熱帯材をゴミのように使い捨て、日本の森は手が入らず荒廃した」冗談のような本当の話です。

ストーリー6 わたしたちにできることは?

では、わたしたちにできることはないのでしょうか?熱帯林破壊の原因の多くが消費にあるのであれば、それを解決するのも また消費であるはずです。ほんの小さなところからですが、熱帯林を破壊しないアグロフォレストリー(森林農法)を用いた コーヒーやはちみつ、森林環境に配慮した木材製品を扱うフェアウッドやFSC認証、エシカル(倫理的な)ケイタイやジュエリー といった動きも生まれています。毎日何気なく行っているお買い物だからこそ、どこからやってきてどのように生産されたものか、 気をつけたいものです。ウータンでも持続可能な消費と生産を応援していきたいと思います。

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準備中

World Resources Institutes(2000): 「World Resources 2000-20001」
環境省: 「国際的な森林保全対策」(2016/1/3アクセス)
農業情報研究所: 「アマゾン森林破壊の最大要因は牛飼育、EUの牛肉需要が破壊を加速」(2016/1/3アクセス)
レスター・R,ブラウン(1995): 「だれが中国を養うのか?‐迫りくる食糧危機の時代」ダイヤモンド社
ラジ・パテル(2010): 「肥満と飢餓‐世界フード・ビジネスの不幸のシステム」作品社