自治体キャンペーン

自治体キャンペーンとは、公共事業でのコンクリートの型枠材(コンパネ)に使われていた熱帯材の使用削減、代替工法への呼びかけ、 商社等への木材輸入禁止の訴えを全国的規模で行ったものです。ウータンはキャンペーン当初から継続して活動し、特に大阪府内の 自治体へ働きかけて熱帯材使用削減の政策へ、大きな後押しをしました。

ストーリー1 現地住民の訴えに心打たれ

熱帯林で暮らす先住民(プナン族)の代表団が1990年に来日し、私たちは現地の森と生活が破壊されている現実を知りました。 これをきっかけに、ウータンは大阪で熱帯木材の使用削減を目標に立ち上がりました。東京ではJATAN、奈良では熱帯林保護ネットワーク (当時)が共に立ち上がりました。 当時は、イギリスのロックシンガーがアマゾンの自然危機を訴えるためにワールドツアーを行う等、森林保護に対する世界的な意識の 高まりが見られました。ウータンのメンバーも、スタディーツアーとしてボルネオ島のサラワク州ウマバワン村を訪れるなどし、 自らの目で確かめたこの問題を、何とか世間に広めようと皆で意見を出し合いました。

ストーリー2 まずは身近な自治体から

私たちは、国や企業に働きかけるよりも前に、まず身近な自治体等に働きかけることにしました。サーポートとして日本弁護士連合会の 方々に助言を頂きながら、熱帯木材(ラワン合板)の不使用・削減!を訴えて、自治体キャンペーンを展開していったのです。 例えば、抗議署名を集めて、大阪府、大阪市に「公共事業におけるコンパネ等熱帯木材使用停止の申入書」を送付(1990年)したり、 大阪府、大阪市議員(203名)に「熱帯林問題についてのアンケート」を実施(1991年)したりしました。

ストーリー3 問い詰める交渉から、一緒に考える交渉へ

活動初期のウータンメンバーは、交渉の経験も無く、その仕方も分からないまま、居並ぶ関係各局の方々に向かって、「熱帯林の破壊を どう考えているのか?さぁ!どうなんだ!?」と問い詰めていました。 ところが、相手はきょとんとするばかり・・・。当然ですよね。初めて熱帯林のことを聞かされたのに、「さぁ、どうする!?」と 問い詰められても答えようがありません。弁護士の方々から助言を頂きながら、私たちは考えを改めました。 「熱帯林保護のために、ラワン合板削減を一緒に考えてもらえませんか?」という交渉をする方が、スムーズに進むのです。 これに気付いて以降、大阪各地の自治体で話合いが持てるようになりました。

ストーリー4 全国各地で熱帯材使用削減の動きが

こうした自治体キャンペーンは日本各地に広がりました。小さくはありますが、熱帯林保護のグループがいくつもできたのです。 大阪府下の自治体は 45 自治体のうち 25 自治体が熱帯材使用削減方針を発表し、全国では 300 自治体での熱帯材使用削減に成功した。 また、建築業協会は「5年以内に型枠用熱帯材の消費量35%以上削減目標」を定め(1992年)、業界として取組みがなされました。 大阪南港の平林には、かつて多くのラワンの丸太が浮かべてありましたが、現在その風景は無くなりました。

ストーリー5 その後

私たちは、選挙ポスター用の掲示板に合板が使われ、終了後には捨てられてしまうことにも目をつけ、同じように自治体へ足を運び、 交渉してゆきました。様々な分野で、ラワン合板は針葉樹合板へと転換してゆきました。 しかし、今度はロシア極東地域での乱伐が問題となります。ウータンは国産材(杉・檜)の活用を訴え、枝打ちなど山の整備を 行ったりもしました。どんなちっぽけな木でも、それぞれに素晴らしい役割があるのだと思います。無駄な消費や伐採に繋がって いないかどうか、目の前の木材について、いつも問いかけたいものです。

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